発達心理学論文備忘録*論文千本ノック

最近読んだ論文(主に発達心理学、英語)の備忘録を記しています。論文千本ノックチャレンジと題して、論文千本読もう!とこのブログをはじめましたがどうなることやら…。内容には間違いがあるかもしれませんので、論文の内容に関心のある方は原文を読まれることをおすすめします。丁寧に読んだ論文からざっと読んだ論文までいろいろなので、文章のクオリティは保証しません。

Teresa et al. (2018 in press). Development and assessment of stressful life events subscales: A preliminary analysis.

Teresa et al. (2018 in press). Development and assessment of stressful life events subscales: A preliminary analysis. Journal of Affective Disorders.

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

本研究の目的

Synergistic Theory and Research on Obesity and Nutrition Group (STRONG Kids) cohortのデータを用いて、信頼性および妥当性のあるストレスフルライフイベント尺度の作成を目的とした。本研究での目的は(1)Social Readjustment Rating Scale (SRRS; Holmes and Rahe, 1967)を用いて、ストレスフルライフイベント尺度の構造に関する予備的知識を得ること、(2)両親および子どものウェルビーイングを特定する下位尺度の信頼性および妥当性を査定すること。

方法

対象者

STRONG Kids cohortの一部として募集された両親(保護者)と彼らの2~5歳の子ども497名が参加者であった。

尺度

①ストレスフルライフイベント尺度

SRRSから適用した43のライフイベント(結婚、上司とのトラブル、親しい人との死などを含む)への回答を求めた。対象者394人(55% female, 92% White, 46% with less than College education)は、43のライフイベントに対する再適応の知覚の大きさを評価した。結婚は50として評価。対象者はそれを基準に残りの項目が結婚よりも再適応を要するか否かを評価するよう求められた。本研究では、保護者は、家族またはその直属家族の誰かが過去1年間イベントを経験したかどうか尋ねられた。経験したライフイベントがストレスフルであった場合、保護者はそのイベントの隣にチェックマークをつけるように求められた。もしストレスフルでなければ、空欄のままであった。ストレスフルであったとマークされたイベントは1とコード、それ以外は0とコードされた。これらの合計得点はライフイベントの合計および下位尺度得点を構成するために用いられた。

②Medical Outcomes Social Support Scale (MOSS), Social Support Scale, Depression, Anxiety and Stress Scale (DASS- 21), 14 general health items (11 caregiver-specific items, 3 child- specific items)が妥当性を検討するために用いられた。

統計解析

探索的因子分析、確認的因子分析、相関係数算出、χ2検定など。

結果

因子構造と内的整合性

はじめは7因子解が抽出されたが、下位尺度の内的整合性が低いなどの理由に、最終的に4因子解に収束した。因子は、①社会と経済的再適応(Social and financial readjustment)14項目、②趣味および家族ダイナミクスの変化(Change in habits and family dynamics)12項目、③社会的非行および職業的困難(Social misconduct and work-time challenges)11 項目、④死と対人関係の変化(Death and change in relationships)6項目。内的整合性Cronbach's αは、合計得点で.869、第1因子で.722、第2因子で.742、第3因子で.617、第4因子で.568であった。各因子で因子負荷が高かった項目を挙げると、第1因子では「大きな個人的怪我あるいは病気」、第2因子では「レクリエーションのタイプや量の大きな変化」、第3因子では「退職」、第4因子では「個人的趣味の変化」であった。

妥当性の検討

相関係数を算出した結果は次のとおりであった。MOSSとの相関については、合計得点と第1因子「社会と経済的再適応」と第2因子「趣味および家族ダイナミクスの変化」には弱い負の相関(-0.1~-0.2程度)が認められた。DASSとは、合計得点およびすべての因子で弱い正の相関(-0.1~-0.3程度)、Social Support Scaleとは合計得点、第1因子、第2因子で弱い負の相関が確認された。

考察・結論

ストレスフルライフイベントの異なる側面を測定する4つの妥当な下位尺度が作成された(i.e.,社会と経済的再適応,趣味および家族ダイナミクスの変化,社会的非行および職業的困難、死と対人関係の変化)。それらは探索的因子分析および確認的因子分析の結果作成された。Cronbach's αは.57~.74で許容できる範囲を示した。

健康心理学では個人と環境の関係性は、ストレスフルライフイベントやコーピングおよびソーシャルサポートのような媒介かつ調整因子に沿ってこれまで分析されてきた。家族ライフサイクル理論は、ライフイベントは個人と家族の機能に影響を及ぼすことを仮定している。ライフイベントの測定は家族のウェルビーイングについての情報を提供するために不可欠であると思われる。

 

論文を読んだ印象

ポジ&ネガを両方含むライフイベントの影響を包括的に測定する尺度は面白い。ただ、幅広い項目を含むがゆえに、信頼性が低い下位尺度があるのは気になった。各因子の特徴を適切に表していないと思われる項目が含まれている印象がある。たとえば、第4因子「死と対人関係の変化」ではもっとも因子負荷が高かった項目は「個人的趣味の変化」であり、これは一見すると第2因子「趣味および家族ダイナミクスの変化」に含まれるのでは?と思える。この雑誌の2016年のIFは3.432と結構高いが、そこまで完成された尺度ではなくでも掲載されるのね…