発達心理学論文備忘録*論文千本ノック

最近読んだ論文(主に発達心理学、英語)の備忘録を記しています。論文千本ノックチャレンジと題して、論文千本読もう!とこのブログをはじめましたがどうなることやら…。内容には間違いがあるかもしれませんので、論文の内容に関心のある方は原文を読まれることをおすすめします。丁寧に読んだ論文からざっと読んだ論文までいろいろなので、文章のクオリティは保証しません。

Newman et al. (2007). The relationship of social support to depressive symptoms during the transition to high school.

Newman et al. (2007). The relationship of social support to depressive symptoms during the transition to high school. Adolescence. 441-459.

www.ncbi.nlm.nih.gov

本研究の目的

本研究では3つの仮説が検証された。

仮説1:8~9学年にかけてソーシャルサポートは低下する。

仮説2:8~9学年にかけて抑うつは増加する。

仮説3:性別、成績、他のライフストレッサーを統制すると、3つのソーシャルサポート(友人、両親、学校所属)は9学年の抑うつを予測する。

*8学年=高校移行前、9学年=高校移行後

方法

対象者

本研究では、横断と縦断データを組み合わせたデータが分析された。

Year1では、205名(女性122名)の8学年および9学年の生徒が参加した。104名が8学年、101名が9学年であった。対象者は主に中~高所得層の白人系コミュニティーが在住するSouthern Rhode Islandから抽出された。

Year2では、Year1で8学年だった生徒60名(i.e.,9学年)が再度参加した。8学年のコホートに新たに129名が追加された。

尺度

友人と家族サポート(Perceived Social Support Measure; Procidano and Heller, 1983)、学校所属感(Psychological Sense of School Membership Scale; Goodenow, 1993)、抑うつ(Reynolds Adolescent Depression Scale; (Reynolds, 1987)、ストレッサー(Life Events Questionnaire)。

結果

仮説1

横断データの分析によって、知覚されたソーシャルサポートは、8学年よりも9学年のほうが低いこと確認された。

縦断データの分析では、8~9学年にかけて学校所属感の低下が確認された。ソーシャルサポートでは、有意な現象は確認されなかった。

仮説2

横断データの分析の結果、9学年のほうが8学年よりも抑うつが高かった。

縦断データの分析では、8~9学年にかけて抑うつの増加が確認された。

仮説3

横断データを用いて、性別、成績、他のライフストレッサーを統制(Step1で投入)して階層的重回帰分析を行った結果、友人および家族サポートと学校所属感(Spep2で投入)は抑うつ(従属変数)を負に予測した。

縦断データを用いて、Step1で性別、成績、他のライフストレッサーを投入、Step2でTime2(移行後)での友人および家族サポートと学校所属感を投入、Step3で友人(M=-1.00, SD=7.93)および家族(M=-1.88, SD=9.90)サポートと学校所属感(M=-3.11, SD=7.18)の変化量を投入し、抑うつを予測した階層的重回帰分析を行った。その結果、全てのStepで重決定係数は有意であった。友人サポートの変化量における標準偏回帰係数βは-.285(p < .05)、家族サポートの変化量におけるβは.370(p < .01)であった。*符号が負!?

考察&結論

本研究の結果は、高校移行に伴って、学校所属感が低下し、抑うつが高まることを確認した。9学年の結果では、両親サポートと学校所属感が抑うつ症状と有意に関連することが示された。縦断的な分析は、友人および家族サポートの変化が抑うつに寄与する追加的な要因になることを示した。これらの結果は、横断および縦断的なアプローチを組み合わせる価値を明示した。

論文を読んだ印象

仮説がシンプルでわかりやすい。縦断データに基づくと、やはり抑うつは高まるようである。気になったのは、仮説3の変化量をStep3で投入した友人サポートβの値が、負になっている点。多重共線性が生じたか、結果の書き間違いか。